@IT自分戦略研究所ブックシェルフ(77)
テクノロジが「21世紀の三河屋さん」を実現する
@IT自分戦略研究所 書評チーム
2008/12/26
■顧客の行動を先読みする技術
次世代マーケティングプラットフォーム 広告とマスメディアの地位を奪うもの 湯川鶴章(著) ソフトバンク クリエイティブ 2008年9月 ISBN-10:4797348844 ISBN-13:978-4797348842 1680円(税込み) |
時事通信社の編集委員である著者はこれまで「Webとメディア」の関係についての書籍を執筆してきた。本書は、その流れの先にある「広告とマーケティング」の領域へと足を踏み入れている。
かつて企業は、顧客に対して「きめ細やかな対応」を行っていた。しかし、効率追求のために顧客対応のプロセスが役割分担され、それぞれのプロセスで画一化された製品やサービスを提供するようになった。結果、コストパフォーマンスは向上したが、「きめ細やかな対応」は失われてしまった。「このきめ細やかなサービスをテクノロジを使って取り戻すことが、IT革命の本質の一つではないか」(『次世代マーケティングプラットフォーム』、p.43)
この「きめ細やかな対応」を著者は「三河屋さん的なサービス」と呼ぶ。長谷川町子の漫画『サザエさん』に登場する酒屋さんである「三河屋さん」は、磯野家宅に出入りし、磯野家の家族のことをよく知っている。「台所には酒や醤油がどの程度残っているのかも、だいたいは目処がついている」(同、p.44)ので、最適なタイミングで、最適な商品を勧めることができる。
現代のテクノロジが実現した三河屋さん的なサービスは「Amazonのリコメンデーション」「検索連動広告」「行動ターゲティング広告」など。著者は「まだ不十分だ」と断言する。
OmnitureのWeb解析、Salesforce.comのSaaS型CRM、DoubleClickの広告マーケットプレイスを例に取りながら、著者は「次世代マーケティングプラットフォーム」の在り方を探る。デジタルサイネージとモバイルを「リアルとネットの融合」の事例として取り上げ、これらの領域が「三河屋さん的なサービス」実現の急先ぽうであると説く。
日本のテクノロジ企業はどうすべきか。「欧米のテクノロジ企業は共存共栄戦略で進み始めている。日本のテクノロジ企業もプラットフォームを日本だけで作るのではなく、もうすでに台頭しつつあるプラットフォームにどう連携できるかを考えて進むほうがいいのではないだろうか」(同、p.173)
マスメディアのビジネスモデルが崩れ始めた。テクノロジ企業にとって「広告とマーケティング」の領域は新たな市場としての可能性を秘めている。(鮪)
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